★12月11日 人口流産(命日)

早朝から年中イラついた感じのするナースに起こされる。
しかも寝込みを襲われたみたいに浣腸〓怒ったように今日は口すすぐ事もできませんから!
なに怒ってんだ?仮眠明けでヤツ当たり?更年期かよーと思ったけどチビの事考えると落ち着けない。
今日で18週6日。よっぽどの理由がないと堕胎なんて選択しない大きさだと思う。朝ラミナリアを抜き取る。
子宮の人間ポンプみたいにスポッと音がしたと同時に圧迫痛が最後まであった。
そのまま、1つ目のプロスタグランディン膣坐薬(プレグランディン)を膣内に。
観察室へストレッチャーで移動。破水対策のために防水シートを腰一面に敷く。


陣痛から破水まで

微弱な陣痛はすぐに始まった。もうすぐお別れなんだ・・・そう思うと悲しくなって涙が出た。
ベビーはまだ動いているし確実に生きている事が身体で感じれる。
本当は出したくない・・・そんな気持ちでいたから陣痛も長引く。
いっこうに強くならない痛みが続いたためアトニン(脳下垂体後葉ホルモン)の点滴も追加された。
何錠目かのプロスタグランディン膣坐薬挿入の後、ベビーがお腹の中で
グルグルと今までにない動きをしていた。
きっと、この時点でベビーの苦しみが始まったんだと感じた。ごめんね、ごめんね。本当にごめんなさい。
体中が痛み横になっていられず、看護婦さんにベッドを起こしてもらう。
すぐにお腹の中で驚くほどの異変があり『パチン』と大きな音がした。
同時に生暖かい水がたくさん出て破水した。おおがかりな着替えが始まった。
3人がかりで動かない身体を動かしてもらい全て着替える。破水によって陣痛は少しの間、遠のいた。
今後は導尿だね。そう言われてさっそく管を尿道へ差し込まれた。痛いけど
この辺りですでに、自力では排泄できないほど痛みや下がったベビーの圧迫で麻痺していたようだった。
膀胱には残尿感がいつもあった。そのつど導尿される。
たびたび内診されて、かなり下がってきた事が分かる。子宮底を圧迫されると手前に来て痛みが始まる。
子宮の奥へ行くと痛みが消える。上に逃げるベビー。
刺激されても、まだ出たくないと意思表示しているかのように思えた。
悲しみが増す。ごめんね、ごめんね。本当にごめんなさい。
新たにプロスタグランディン膣坐薬(プレグランディン)が追加された。これで4錠目。



あなたを感じていたかった時間

数時間が経ち、子宮口だか子宮頸管に引っかかる感覚があった。
2人出産しているので、間もなく出てくるような気配を感じたと同時に、いきみがきた。
まだ繋がっていたいから、いきみを逃す。
ダメ、まだ心の準備ができていない・・・というより身体を分けたら
もう、あなたを感じる事はできなくなる、最後の瞬間。
できるだけ長く感じていたくて、いきみを堪える。
いきみを逃すのは辛い作業だけど、我慢、我慢。絶対我慢。
何十分も、子宮口や産道だけでも、しっかりとあなたを感じたいから。
ごめんね、お別れの時が本当に来ちゃったね。ごめんなさい。ごめんなさい。
オペ室に移動の準備がバタバタと始まった。



最後


ストレッチャーへ移動する。腹圧もかかるから、いきみを堪えるのが辛い。
だけど我慢。まだまだ私はいきみたくなかった。
ひたすら夢中になって我慢を続けた。
絶対にいきまない。時間が止まってくれたら・・・そう思った。
オペ台に乗り、足を固定。まだまだダメ。いきみは我慢。
腰をあげてお尻の下に何かを敷かれ、腰を落とされた。それでも我慢に我慢の瞬間・・・終わった。
小さな身体が勢いよく通り抜けたあとでゴムホースのように長い長いへその緒が飛び出した。
自分の健康管理が原因で断念し産声のないベビーを出産した。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。ベビーは天使になった。12月11日、22:09。



その後


先生も一番気になっていた胎盤処置。悲しむ間もなく麻酔が打たれた。
少しだけ、いきんで!の声で自分のおへそ方向を見ながらいきむ。
ベビーがとても気になる。ちょっとだけ、へその緒の、こんもりした山が見えた。
この臓物の下に私の子がいる・・・どかしてあげて!
そう思うと悲しくて寂しくてどうにかなりそうだった。自分が出した結果なのに
本能だけでも十分に子を思えるのに実際とは違う行動をとった自分に怒りまくった。これが現実だった。
ぜんぜん効かない麻酔。痛くて痛くて、傷口をえぐられるような地獄の痛みでもがく。
看護婦さんも驚いて『効いてないの?』と言う。でも効かないけど我慢すると答える。
そう?と聞かれたような感じがしたけど私もそれで良いと思った。


私より、あなたのほうが、ずっとずっと苦しかったでしょう?


離れたところから、自分の血肉分けた子へ心の中で思う。
酸素が薄くなったらしく、なにか言われて酸素マスクを口へ当てられる。
痛い!けれど悲しみのほうが大きくてベビーを天使にした罪だとこらえて動かずに処置を受ける。
一番大事な処置だから、もうすぐ終わるから、と先生に話しかけられたけど
頭は離れ離れになった子の事でいっぱいだった。
処置が終わってガーゼを膣に詰められる。痛いはずだけど精神的にダメージが大きくて
麻痺していた。なにも感じなくなっていた。導尿されてから病室に戻るための準備が始まった。


きっとまた逢える。そう心でつぶやいた。


ストレッチャーに移動した。


病室で・・・

すべて終わった。体中が痛い、よりも悲しくて辛くて、おかしくなりそうだった。
でも気を確かに持たなければ、いけない立場にいる私。
明日からは切り替える準備をしなければならない。
2児の母親だし感傷にひたっている場合ではないと思った。
明日のために今夜は色々事を考えるのやめようとしたけど眠れなかった。
ただ、天使にさせてしまった懺悔をしながら辛くなるだけだから泣かない・・・
そうと思っても家では子供達の手前があって泣けなかった反動で沢山感情が出てしまう。
そして何事もなかったように帰って子供達に『ただいま〜』と『良い子だったね』を
明るく言わなきゃならない義務がある。子供がいての中絶は心が痛すぎるのは当たり前だ。
かわいい部分、憎たらしい部分、子供が教えてくれるものの良さ、全て知って堕胎を選択した。
朝、次女に行ってくるねと話した時、本当はイヤと言いたいのに言えないでうつむいていた。
お腹の子含めて子供達がみんな、親の勝手で産まれたり堕ろされたりして、かわいそすぎると思った。
大人の勝手で入院して寂しい思いをさせて、産声を上げない子を出すために子宮口をこじ開け
薬で陣痛を味わう。途中から産めないと分かった時はショックでおかしくなりそうだったのを
気丈に振る舞ってきた。そんな事が走馬灯のように繰り広げられた。
気がついたら、この文章を打ちながら携帯を握り締めハッとする。
眠りたくない、今日は。
どんなに眠くても今日は眠りたくない最後の夜だった。



夜中の注射

2時頃に子宮収縮のための注射をしに看護婦さんが来た。オペ室でもお世話になった看護婦さん。
今日は夜勤?とっても話しやすくて何もなかったかのように接してくれる
その心使いがすごく嬉しかった。気さくに明るく振舞ってくれる。
短い時間だけど世間話もしたり和ませてくれる。注射の針はさほど感じなかったけど
中身がジワッと入った時が痛いと不評だとか、おもしろおかしく話してくれる。少し元気が出た。
この看護婦さんじゃなかったら悲しみのどん底になっていたかもしれない。
朝から水、食が禁止だったのでジュースを持ってきてくれたのが嬉しかった。
ブドウ糖の点滴6本打ったので、お腹はすいていなかった。
その後、先生が回診に来てグラスに氷水を入れてきてくれたのも嬉しかった。


(1/7 一部修正)

      退院の日へ




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